研究内容
マッサージの効果を時間的に評価する新手法を開発
自身でマッサージをすることでも心地よさは得られますが, 誰かにマッサージしてもらうことで得られる心地よさはそれ以上の満足感を得られます.
本研究では, ハンドセラピーで施術を受ける対象者に, 統計的な手法で選んだ8つの評価語を施術中に感じたタイミングで選んでもらうことで, 施術の各段階ごとに, どのような感情が優位となっているのか時間軸でデータを収集, 解析しました.
n感性AIシステム:VIRTUAL STANDARD™ AI-PATTERN
本研究では, 人の感性と元になる柄の情報を組み合わせることで, 数千パターンにのぼる柄を生成AIが自動で制作するシステム「n感性AIシステム:VIRTUAL STANDARD™ AI-PATTERN」の開発, 展開を進めました.
*「n感性AIシステム:VIRTUAL STANDARD™ AI-PATTERN」は, 人の感性に基づいた柄を生成AIが提案するシステム. クチュールデジタル株式会社(大阪市)との共同研究成果を活用しています.
触感計測技術に基づく感性価値を高めた製品開発
本研究では, 感性を数値化する研究が生み出した「心地よい」使用感を高めたふきとり化粧水を開発, 発表をしました.
ふきとり化粧品の価値を意識するまでに至る過程を解明するために, 使用シーン毎に主観評価実験を行い, 使用者の心理構造を可視化しました. この結果, 「肌摩擦感」と「ふきとれた実感」の両立が, ふきとり化粧品の価値の実現において重要であることを見出しました.
マルチタスク学習を用いたスーツスタイルにおける印象推定モデル
従来の研究では,様々なプロダクトの印象推定モデルが構築されてきた.しかし,これらの多くは”派手な”や”上品な”といった印象毎にモデルを構築しており,計算コストが大きすぎるという課題がありました.そこで本研究では,スーツスタイツを対象とし,マルチタスク学習を用いることで複数の印象を同時に学習・推定するモデルを構築します.まず,①スーツスタイルの画像を収集する.次に,②心理実験を行いスーツスタイルの印象を定量化する.最後に,③マルチタスク学習を用いて印象推定モデルを構築する.その結果,従来の印象毎にモデル化する手法と精度にほとんど差はなく,計算コストを大幅に削減できることを確認した.
Neural Style Featureを用いた感性的質感認知に基づくテクスチャ生成
従来の研究で,感性クエリによる柄検索システムの実装を行いました(詳細は「CNNのスタイル特徴と感性指標に基づく柄検索システム」を参照).しかし,あらかじめ用意されている柄の中から選ばなければならず,真のパーソナライズとは言い難いという課題がありました.そこで本研究では,より一人ひとりのイメージに合わせたオリジナルな柄を生成する枠組みへと拡張させます.本手法では,定量化した感性的質感(テクスチャから喚起される印象)と画像から抽出したスタイル特徴との関係性をモデル化し,得られたモデルに基づき感性的質感に寄与する特徴量を変化させ画像を生成します.未知柄を用いて効果検証実験を行った結果,生成画像から喚起される感性的質感が元画像と比較し全体として有意に向上したことを確認しました.
時系列テキストデータを用いた感性評価指標の抽出~普遍性と時代性の検討~
従来の研究で,Web上のレビューテキストから感性メトリックを自動構築しました(詳細は「感性メトリック」を参照).しかし,評価対象の感情や印象が定常的であることが前提とされており,実際は一定期間内では普遍的に用いられる感情や印象と,時系列的影響を受けている感情や印象が混在しているという課題がありました.そこで本研究ではWeb上のテキスト内の評価語出現頻度の時系列変化に基づき,普遍性のある感性構造と時系列的影響を受けている時代性のある感性構造の分類に取り組みます.(本研究において普遍性は,ある長期時系列において変動が少なく,時代に関わらず存在する性質と定義され,時代性は,ある長期時系列において一定以上の変動が存在している性質と定義されます.)
評価語出現頻度の時系列変化を状態空間モデルを用いて解析し,得られた変動成分のクラスタリングを行う事で,普遍性のある印象と時代性のある印象の分類を行います.
8年間のファッションニュース記事に対して提案手法を適用した結果,実際のファッションの流行との類似性が示唆され,印象構造の普遍性と時代性の分類が可能であることを実証しました.
励ましメッセージを含むラップ曲が大学生の気分・感情に与える影響
これまで,音楽がもたらす心理的効果について様々な視点から研究が行われてきました.しかしラップ曲の歌詞の有無によって大学生の気分や感情にどのような影響があるかは検討されていません.本研究では励ましメッセージを含むラップ曲が大学生の気分・感情に与える影響について検討を行いました.
「感性価値メトリック」-AIをベースにしたプロダクトデザインの感性指標の自動構築
プロダクトデザインの設計では, プロダクトの感性的評価の抽出が重要です. 本技術はWeb上に存在するビッグデータ(商品レビューなど)からAIを用い自動的に感性指標を構築します.
プロダクトの感性的特徴を抽出するためにWebのレビューから評価表現辞書(アプレイザル辞書)を用いて評価語を抽出し, アプレイザル理論(内評価/外評価)により感情表現と印象表現に階層化, 機械学習(HDP-LDA)を用いて印象メトリックを自動構築しました.
これを感情層と物理層にも拡張し, 感情表現辞書の感情カテゴリと印象語の対応付け, 物理要素を表す単語と印象語との関連付けを行い, 感性の階層構造(感情層―印象層―物理層)を双方向に繋げた感性メトリックを自動構築しました. さらにグローバル化に向けて, 多言語の評価表現辞書の作成手法を確立し, 英文SNSからの感性自動指標化に適用しました.
CNNのスタイル特徴と感性指標に基づく柄検索システム
プロダクトのカスタマイズ化やパーソナル化への関心の高まりにより,ファッション業界においては,ネット上でオーダーメイドの衣服を注文できるサービス等が注目されています.そこで,よりユーザの好みやイメージに合ったデザインを提供するため,衣服の柄における感性的な印象の定量化・指標化技術が求められています.本研究では,衣服の柄,その中でも特に花柄を対象とし,感性指標と関連付けた印象推定モデルの構築,およびそれを応用した柄検索システムの実装を行いました.このシステムは,①花柄に対する視覚的印象の定量化,②CNNを用いた,花柄を表現するスタイル特徴の抽出,③視覚的印象とスタイル特徴の関係性のモデル化,④印象値が未知の画像データに対する印象の推定の4つの技術から実現されています.これにより,数多く存在するデザインの中から感性的なイメージで直感的に柄を検索することができ,オリジナルな衣服をデザインする際の人的・時間的コストの軽減にも貢献します.本研究で実装した柄検索システムは,下記のQRコードから体験していただくことができます.(クチュールデジタル株式会社,株式会社センチュリーエールとの共同研究)
深層学習を利用したデジタル質感生成システム
プロダクトデザインにおいて質感は物の良し悪しや好ましさを評価,判断する上で,形や色,機能と同様に重要な要素の一つです.そのため,近年ではプロダクトデザインの現場において,質感を理解・制御する技術が求められています.そこで本研究では,所望の質感を直感的に実現する枠組みとしてデジタル質感生成システムを提案します.このシステムは ①対象物の質感の数値化,②深層学習を利用した,物理量と質感の関係性を表現する視覚的質感評価モデルの構築,③所望の質感を有する対象物の生成手法の3つの要素技術で構成されています.本システムによる質感操作を施した樹脂板サンプルを用いた効果検証実験の結果,操作意図通りの印象変化を確認しました.本研究によって得られる成果は,直感的に素材の質感を表現することが可能になるという点で,プロダクトデザインにおける質感表現の高度化・簡便化に寄与するとともに,質感に対する人間の認知機序の解明の一助になり得ます.
感性的質感(触覚)計測・提示技術
人が直接触れる製品のプロダクトデザインにおいて触覚的質感は, 製品の良し悪しや好ましさを評価, 判断する上で重要な要素の一つです. 「①触感定量化技術」では, 指先の相互作用力を周波数空間において特徴量化し, 4つの材質感指標と対応付けることで触感の定量評価を実現しています. また, 広範な物体を対象とした触覚制御の実現, 撫で動作にとどまらない多様な触り方への対応を目指し, 大変形問題へ適用可能な「②触覚シミュレーション技術」の開発を進めています. ③「触覚ディスプレイ技術」では, 指先の振動の最大振幅を持つ周波数成分を制御信号としてアクチュエータを制御することで触覚提示の実現を目指しています.(井村誠孝教授との共同研究)
触感定量化技術およびそれを用いた製品設計
触感定量化技術を応用したデジタル触感生成システムは, 指先が触れる表面性状(ハイトマップ)と指先の接触時に生じる相互作用力を周波数空間において特徴量化し, 特徴量と触覚的質感の関係性を高精度に表現する予測モデルを構築することで, 所望の触覚的質感を有する対象物を生成する技術です. 本技術により触感の定量的利用が可能になり, プロダクトデザインにおける触感表現の高度化を支援します.
素肌の透明感とメイク肌の透明感の比較
透明感は素肌においてもメイク肌においても重要視されることの多い質感です.当たり前ですが,素肌とメイク肌の質感は異なっています.では,素肌における透明感とメイク肌における透明感には違いがあるのでしょうか.私達は,メイキャップアーティストなど肌の専門家から,素肌とメイク肌のそれぞれについて,透明感を有する肌が持つ質感を表現する語句を多数集めました.それらの意味的な距離関係を測定する心理実験を行い,素肌とメイク肌のそれぞれにおける透明感に関連する語句をマッピングしました.その結果,素肌とメイク肌の透明感は概ね共通しているものの,素肌の透明感には「経年変化を感じさせない純粋さ(ピュアさ)」,メイク肌の透明感には「化粧が過剰でなく上質なキメと滑らかさ(シルキー感)」という独自の要素があることを明らかにしました.また,この研究成果を活用したファンデーションが商品化しました.(株式会社KOSEとの共同研究)
モノづくり版円環モデルの作成
専門的な知識や技術が必要となるパーソナルファブリケーションから,知識や技術を持たない児童が参加するような工作やお絵かきに至るまで,私たちは自発的に様々なモノづくりを行います.モノづくりにおいて,「作る喜び」のようなポジティブ感情は当然存在し,私たちをモノづくりに駆り立てるものとして扱われてきましたが,その性質や,モノを作る人の性質による感情の個人差は明らかにされていません.そのため本研究では,モノづくりにおいてどのような感情が喚起され,またそれがモノづくりの熟達によってどのように変化するのかを明らかにしました.実権結果から,モノづくりにおいては満足感に代表されるポジティブ感情が確かに喚起されており,またそのポジティブ感情が熟達に従って分化・複雑化されていくことが明らかになりました.本研究の結果は熟達者の「作る喜び」が初心者に比べて複雑なものであることを示しています.(山本倫也教授との共同研究)
感性指標を用いた介護椅子の評価
立ち上がったり座ったりすることは日常生活において必要不可欠ですが,体力の低下した高齢者や,身体の不自由な人にとってこれらの動作は困難です.そのため立ち座りを支援する機能をもった介護椅子が開発されていますが,これらの椅子に対する評価は動力学的な観点からのものが中心で,ユーザの感情的な側面からは十分に注目されていません.したがって本研究では,介護椅子使用時に喚起される感情に基づく介護椅子の評価手法を開発しました.実験結果から,介護椅子使用時には様々な感情が喚起され,これらの感情によって介護椅子の評価が異なることを明らかにしました.この結果は,感情指標を用いて製品の強みや弱みを明らかにできることを示しています.(株式会社住化分析センター,株式会社アイケアラボ,中後大輔准教授との共同研究)
階層的アプローチによる感性指標化技術の高度化
感性指標化技術の高度化に向けて,感性の階層的なモデル化に取り組んでいます.ある対象物に対する人の感性的な反応は,対象物に対して抱くイメージや,その対象物に対する好みの感じ方といった様々なレベルで形成されていると考えられます.本研究では,3次元の形状に対する感性のモデル化を行った研究を発展させて,感性評価から対象の性質を記述する側面と対象への価値的判断を行う側面を別々に抽出し,それらの階層的なモデル化とその有効性の検討を行いました.研究では,3次元の形状に対する「印象」と「選好」を測定する独立した感性評価実験を実施し,「選好」が「印象」から形成される様子をモデル化しました.さらに,対象物の種類や個人ごとにモデル化を行い,それらの違いによって異なるモデルが得られることを確かめました.本研究の成果は,多様な観点で構成される感性評価を階層的なアプローチで整理することの重要性を示唆するとともに,感性評価に対する文脈や個人差の影響を考慮する場合にこのアプローチが有用であることを明らかにしています.
評価データから個人特性を推定する分析アルゴリズムの開発
本研究では, SD法を代表とする手法で得られる, 3相データを分析する新たな分析手法を提案しました. 本研究で提案した分析のフレームでは, 従来は誤差として処理されていた感性の個人差をデータ分析に取り込むことによって, より正確な予測や判断を行うことを目指しています. ここでは, ある個人(A)のある刺激(B)に対する印象は,各刺激の特徴と個人(A)の評価傾向の和で定まると仮定し, それらと負荷行列からなる最小二乗基準を示し, その最適化のアルゴリズムを示しました. 人工データを用いたシミュレーションでは,誤差の強さ,刺激の数,個人の数を変化させたデータセットの分析を行い,負荷行列の再現性を確認し,本手法の妥当性と, 差が大きいデータに対する有用性が示されました. 実データであるテレビ番組の評価データの分析では, 本手法を用いることで解釈可能な解が得られることが示されました. これらのことから, データから一貫した個人差を探索可能であるという本手法の意義が示されました.
脳波によるフロー状態の客観的測定
ある作業や課題にポジティブな気持ちで没頭している状態は「フロー状態」と呼ばれ,高い水準のパフォーマンスや技能の獲得,その活動に対するモチベーションを促進する最適な体験であると考えられています.人がフロー状態にあることを定量的に測定することができれば,この体験を支援する技術の開発につながることが期待されます.本研究では,脳活動を用いたフロー状態の客観的指標の確立を目標とし,特に日常場面での計測が容易な脳波による測定を行いました.実験では,難易度の異なる暗算課題を用いて退屈,フロー,過負荷の各状態を喚起し,フロー状態喚起時の脳活動として前頭部におけるθ波の強い活動と,前頭および右中心におけるα波の中程度の活動を見出しました.これらの結果は,課題に対して最大限の認知的な努力が行われる一方,心的な負荷が抑制されているフロー状態の特徴と一致するものです.また,これらの脳波の特徴を組み合わせることで退屈,過負荷の状態とフロー状態を区別できる可能性が示唆され,脳波によるフロー状態の客観的指標の確立に向けた成果が得られました.
酸化チタンにおける質感表現の高精度化
酸化皮膜を有するチタンは,薄膜干渉による色が様々に変化し,その多様な意匠性から各種応用への注目が集まっております.そのため,酸化皮膜の干渉色や質感をシミュレーションで正確に表現することができれば,デザイン支援につながると考えられます.これまで,酸化皮膜を有するチタンの干渉色シミュレーションは鏡面反射方向の限られた干渉のみを扱っており,実際に三次元構造物に適用した場合には色の見え方を十分に表現できないという問題がありました.そこで本研究では,チタン表面の微細構造によって発生する拡散反射方向での干渉色を表現するため,ハーフベクトルベースの薄膜干渉モデルを提案しました.モデルから得られた分光反射率と計測結果の分光反射率を用いて色差を算出した結果,目標とした許容色差4級以内に収まることが明らかになり.また実際にCG表現を行うことで,モデルの妥当性を確認しました.(新日鐵住金株式会社との共同研究)
デジタル触感生成システム
人が直接触れる製品のプロダクトデザインにおいて触覚的質感は,製品の良し悪しや好ましさを評価,判断する上で,形や機能と同様に重要な要素の一つです.本研究では,所望の触覚的質感を実現する枠組みとしてデジタル触感生成システムを提案します.このシステムは,①指先が触れる表面性状(ハイトマップ)と接触時に生じる相互作用力の周波数空間における特徴量化,②特徴量と触覚的質感の関係性を高精度に表現する触覚的質感予測モデル構築,③所望の触覚的質感を有する対象物の生成手法の3つの要素技術で構成されています.本システムにより触覚的質感を操作した樹脂板を作成し効果検証実験を行ったところ,操作意図通りの印象変化を確認しました.本研究によって得られた成果は触感の定量的利用を可能にした点であり,プロダクトデザインにおける触感表現の高度化に寄与します. (株式会社本田技術研究所との共同研究)
創造性に対する気分の効果の個人間比較
新しいアイデアの発想によって問題解決を行うためには,創造性を発揮することが重要です.創造性には様々な要因の影響があることが知られていますが,その一つに気分が挙げられます.これまで,ポジティブ気分で創造性が促進されるという研究と,ネガティブ気分で促進されるという両方の研究があり,充分な一致が得られていませんでした.我々はその原因の一つとして,気分が創造性に及ぼす影響は,個人差が大きいからではないかと考え,その検証を行いました.創造性を促進する気分の個人差を検討するため,様々な壁の色によって気分を変えて,創造性を測る課題を実施しました.その結果,創造性が高くて課題を比較的苦に思わないような人は,壁の色によって誘導されたポジティブ気分の時に創造性が促進されることが確認されました.この知見は,創造性の高さや抱えている問題をどのように捉えるかによって,創造性を促進するための最適な環境が異なる可能性を示し,壁の色などを選ぶ指針につながることが期待できます.(日本ペイントホールディングス(株)との共同研究)
ちりめん塗装の印象構造と粗さ感の定式化
ちりめん塗装とは一眼レフカメラのボディに施される塗装で,織物のちりめん(縮緬)のようにほどよい不均一さを持つ塗装です.高級感の付与を目的として施される塗装ですが,どのような印象を与えるのかについてはこれまで検討されていませんでした.そこで,私達は様々なちりめん塗装を施したカメラパーツに対する印象評価実験と光学的な計測を行いました.その結果,ちりめん塗装の印象はマクロ粗さ,ミクロ粗さ,雑然さ,風格,細かさに大別することができ,高級感を感じさせるには雑然さを抑えることが重要であることがわかりました.また,光学的な計測から得た特徴量からマクロ粗さとミクロ粗さの主観的な強度を高い精度で予測できるモデル式を構築することができました.((株)RICOHとの共同研究)
擬似重低音の音質に対する感性の指標化
ミッシングファンダメンタルの原理に基づき低音出力を増加させずに高調波を付加することで,擬似的に重低音を知覚させることができます.しかし,擬似重低音付加が音質に与える影響については明らかになっていませんでした.本研究では,擬似重低音付加が音質に及ぼす影響の定量評価を実現するため,心理・生理の両面から感性の指標化を試み,①音質評価構造の解明,②擬似重低音嗜好の有無に対応した擬似重低音聴取時の脳波活動の観測,に成功しました.本研究によって得られた成果は,生理・心理両面からの音質評価を可能にするものであり,音響機器を対象としたプロダクトデザインの高度化に寄与するものです. (三菱電機(株)との共同研究)
コアアフェクトモデルに基づいた二輪乗車時に喚起される感情の指標化
自動車やバイクを運転する際の楽しみや喜びといった感情がドライビングプレジャーとして注目されていますが,どのような場面でドライビングプレジャーが喚起されるかには個人差があることが指摘されており,どのような人が,どのような場面で,どのような感情を生じさせるのかも十分に明らかになってはいません.そこで本研究では(1)バイク乗車に際してどのような感情が生じるのかをリストアップし,(2)それらの感情が快/不可と覚醒/眠気の2つの次元においてどのような性質を持つのかを明らかにし,(3)様々なバイク乗車場面において生じる感情のパターンの違いからライダーの分類を行いました.実験結果に基づき,ライダーを「スタンダードライダー」,「ポジティブライダー」,「クールライダー」,「スーパーポジティブライダー」,「マイペースライダー」,「アクティブライダー」,「アグレッシブライダー」の7つに分類しました.本研究はライダー専用のものさしを作成し,様々な画像を評定させることにより,個人差や状況の違いを反映したユーザーの性質推定を可能にしています.(株式会社本田技術研究所との共同研究)
要素の複合した対象物の感性指標化手法の確立
感性の指標化技術は,製品設計など産業応用に貢献することが期待されます.実際の製品開発に活用するためには,現実の製品がそうであるように,様々な要素で構成される対象物に対する感性がモデル化できる必要があります.そこで,本研究では「色」と「形」の組み合わせを例として,「色」と「形」の各要素が「色・形」の合成刺激に対する感性評価にどのような影響を及ぼしているかを検討し,複合的な要素を持つ対象物における感性のモデル化手法の確立に取り組んでいます.これまで,「色」「形」と形の各要素刺激,「色・形」の合成刺激に対する感性評価実験を実施し,合成刺激の感性評価のにも「色」の影響が大きい側面や,「形」の影響が大きい側面が存在することを明らかにしています.今後は,「色」と「形」の相互作用についての検討や,評価の個人差についての検討を深め,複合的な要素を持つ対象物における感性のモデル化手法の開発を進めるとともに,感性検索など応用的なシステムへの実装を目指します.
外観デザインの選好特性によるユーザー分類
デザインやマーケティングにおいて, 個別的なニーズの充足を促進するために, ユーザーの細分化は不可欠であり, 選好特性に基づいた分類が有効であると考えられます. そこで, 本研究では自動車の外観デザインに対する選好と関連する印象の類似性でユーザーの分類を行いました. その結果, ユーザーは小型な車が好きな「小型志向群」, 車の好みに顕著な特徴がない「現実志向群」, 高級な車が好きな「高級志向群」に大別され, さらに, 年齢・性別によらない7種類の選好特性に細分化されました. このように, 好みと関連する印象の類似性でユーザーを分類することにより, 年齢・性別を越えた感性傾向を見出すことができました. (株式会社本田技術研究所, 金沢美術工芸大学との共同研究)
タッチパネルにおける操作反応音イメージスケールの構築
近年,ATMや券売機等の公共端末,コピー機等のオフィス機器,自動車車内の操作パネル,炊飯器や電子レンジ等の家電製品まで,日常生活においてタッチパネルの利用が増えてきました.タッチパネルでの操作において,「ピ」や「ポ」などいった操作反応音は,誤操作の低減,操作感向上等の点で有効であることが示されています.しかし,ほとんどの機器製品はJIS規格に沿って設計されているため,異なる機器から同じ音がなるなど,多様性の無さが生じていることも事実です.本研究では,多様な音色で様々なイメージを表現できる多彩な操作反応音を対象とした「操作反応音イメージスケール」を構築しました.このイメージスケールを用いることで,各製品デザインのイメージに合致した操作反応音がスムーズにデザインすることが可能になり,製品の感性価値をより高めることができると期待されます.(同志社女子大学 和氣早苗教授,小島プレス工業株式会社との共同研究)
素肌の質感表現における印象と物理特性の関係性評価
素肌の質感をCGで表現することは幅広い分野で需要があります.本研究では,人の肌に対する印象構造を明らかにし,その印象と物理特性の関係をモデル化しました.まず肌の物理特性に基づいた高精度なCG レンダリング手法を用いて,メラニン,ヘモグロビン,年齢に応じた層の厚みの変化と表面の粗さを表す形状特性の3つのパラメータを変化させ,頬のCG画像を作成します.このCG画像について主観評価実験を行ったところ,低次印象は「べたつき感」,「透明感」,「うるおい感」に分けられ.高次印象は,「美しさ感」,「活力感」に分けられました.さらに,物理特性と低次印象,高次印象を関連付けるため分析を行い,印象と物理特性の関係性をモデル化しました.このモデルを用いることで,所望の印象を与える肌のCGを作成することが可能になり,化粧品の開発などを効率的に行うことができると期待されます.
モーションキャプチャを用いたピアノ演奏スキルの解明
ピアノ演奏は,手指の多数の関節や筋を長時間に渡り協調させる高度な運動技能です.しかし,そのような技能を獲得するための訓練法は明らかにされていません.そこで,本研究では特にテンポの正確性ついてのフィードバック情報の有無やその性質の違いが学習に及ぼす影響を,モーションキャプチャを用いての演奏中の打鍵動作や表面筋電図を用いての打鍵動作に関わる筋のエネルギー効率を計測し解析することで,定量的に示すことを目指しています.結果としてフィードバックが打鍵動作の向上の寄与し,報酬により動作の筋のエネルギー効率の向上に寄与する可能性が示しました.さらに研究を進めることにより,音楽教育におけるエビデンスに基づいた熟達支援を実現します.(Sony CSL 古屋晋一研究員との共同研究)
印象と嗜好の関係性に基づくユーザ分類
プロダクトデザインの目的の一つは,製品がユーザに好感を与えることです.従来好ましさの調査は,ユーザの年齢や性別などの属性ごとに行っていますが,どんな印象の製品が好ましいかは同じ属性内でも個人ごとに異なります.そのため,プロダクトデザインの個別的なニーズに対応した属性によらないユーザ分類が必要です.本研究では,ユーザごとに異なっている「デザインから受ける印象と好ましさとの関係(嗜好特性)」を感性的な評価を測定する実験によって明確化し,嗜好特性に基づいた分類手法を提案しました.生活空間におけるあかり画像を対象にユーザを分類した結果, ユーザはThayerの気分2因子理論の各因子と嗜好との関連が異なる3群に分類されました.Thayerの気分2因子理論とは,気分は緊張度を示す緊張覚醒と活性の度合いを示すエネルギー覚醒からなるという理論であり,今回の分類は心理学的にも正当性があると考えられます(パナソニック株式会社との共同研究).
パッケージデザインにおける高級感印象のモデル化
高級感はブランドや製品に対してプラスのイメージを与える重要な感性価値のひとつです.高級感のあるデザインをつくるためには,人がどのようなデザイン特性に高級感を感じるのかを明らかにする必要があります.そこで,化粧品パッケージデザインの高級感印象と物理的な特徴(画像特徴量)との関係を分析しました.その結果,上品さにはデザインの色の特徴が関係し,高い明度・低い彩度の色に上品さを感じることがわかりました.豪華さには主に質感の特徴が関係し,光沢度が高く複雑なテクスチャに豪華さを感じることがわかりました.このような物理特徴との関係性を持つ上品さと豪華さによって,高級感の印象が決定づけられるという高級感モデルが得られました.このようにして,人の感性とモノの特性を結びつけるモデルを構築することによって,モノづくりの世界に人の感性を取り入れる取り組みを進めています.
一般3次元形状に対する感性評価のモデル化
3Dプリンタのような新しい技術の普及とともに,個人が気軽に3次元の物体を出力し,ものづくりを行うことが可能な時代が訪れようとしています.一方でこれらの技術を使いこなすには,制作に関わる経験や技能が必要とされるため,一般のユーザのものづくりを支援し促進する方策が求められます.本研究では,感性的な言葉(「安定した」「派手な」「柔らかい」など)によって形状を操作し,所望のデザインを得るシステムの構築を目指し,人間が3次元の形状に対して抱く印象を定量化し,形状の物理的な特徴と関連付ける研究に取り組んでいます.これまで,デザインの専門家が制作した抽象的な3次元形状に対する感性的な評価を測定する実験を行い,「評価性」,「活動性」,「力量性」という人間の印象判断に広く見られる評価構造を明らかにしています.今後は,3次元形状の物理計測を実施し,3次元の形状に対する人間の印象評価を物理量から推定するモデルの構築を目指します(金沢美術工芸大学との共同研究).
入浴の快適性の定量的評価
入浴は身体を清潔に保つために欠かせない日常的な活動であるとともに,くつろぎやリラックスを得るための有効な手段としても長らく活用されてきました.近年では入浴効果を高めるための様々な機器が開発されており,それらの評価のために心理的な効果の定量化が不可欠です.本研究では,マイクロバブルを用いた入浴の気分改善効果を心理学的側面から検証しました.心理尺度を用いた検討の結果,感情の代表的なモデルである二次元モデルに合致した気分状態の構造が明らかとなり,マイクロバブルを用いた入浴が,特に「快適感」を向上させたことがわかりました.この他にも,入浴剤や浴室空調を取り入れた場合の入浴の心理的効果を客観的に検討しています(三菱電機株式会社との共同研究).
真珠の光学シミュレーションを応用したベースメイク素材の開発
真珠の輝きを化粧品(ベースメイク素材)に応用することを目指して,真珠の光学シミュレーション技術を開発した.真珠の魅力はそのなめらかな輝きや奥深い光沢にあり,その輝きは多層層状構造による複雑な光学現象に起因する。我々はまず,真珠の光学現象であるにじみ現象と干渉光現象をシミュレーションし,真珠の輝きを持つ人の顔のCG画像を生成した。次にそれら光学現象を変化させ生成した複数の真珠肌CG画像を215名の女性被験者による主観評価を行ったところ,にじみ現象が合成されているCG画像で比較的高い評価が得られた。またベースメイクとしての「仕上がり感」「肌色の好み」「透明感」が高い評価傾向であった。さらに,真珠の光学現象,主観評価,及び魅力度それぞれにおいて関連性を検討したところ,にじみ現象が主観評価及び魅力度に影響を及ぼすことが示唆された。本研究の結果をもとに,真珠のにじみ現象を模倣した素材開発を行うことができた. CGを用いたビジュアルシミュレーション技術はAnalysis by Synthesis手法として注目されている。この手法は設計・評価の高度化,高精度化のニーズに対応していく上で,また,製品開発の工程の時間と費用の削減からも,今後も重要な一技術になっていくと思われる。(株)ナリス化粧品との共同研究。
感性指標化技術による「あかり」のデザイン
LED照明が普及し,調光・調色の自由度が飛躍的に高まっています.この自由度を生活場面で活かすためには,私たちの感性に根差したあかりの価値に基づいた設計が大切になります.本研究では,あかりに対して感じられる高次感性として清々しい雰囲気のための「すっきり感」,落ち着いた雰囲気のための「くつろぎ感」に注目し,心理学的手法と生理学的手法を組み合わせた感性の指標化を行いました.研究の結果,すっきりとしたあかりは覚醒度を高め,落ち着いたあかりは覚醒度を下げることがわかり,朝の目覚めや就寝前といった生活場面に最適なあかり環境をそれぞれのあかりが提供することを明らかにできました(パナソニック株式会社との共同研究).
Multi-band BTDFモデルによる織布の蛍光特性の表現
水の流れと光の振る舞いを融合した媒体である「夜光虫」に注目し,夜光虫をモチーフとしたアート作品”バーチャル夜光虫”を制作した.流体シミュレーションと3次元レンジデータ計測を組み合わせ,CGを用いて仮想的に夜光虫の振る舞いを表現し,さらにユーザの操作によって変化する水の流れに合わせてサウンドエフェクトと発光色を変化させる.これにより,水の流れを媒介とした光と音のインタラクションが実現される.また,より直感的な体験を可能にするため,多層布ディスプレイを映像提示装置として使用したバーチャル夜光虫システムを作成した.
和音性評価モデルにおける心理指標
和音性評価モデルにおける心理指標であるモダリティに代わる指標として,和音の明るさによって和音性を評価するための調和度を提案した.また,心理実験を通して提案モデルの妥当性を検証した.その結果,提案モデルが,ヒトの和音に対する明るさの評価を表現しうるものであることが示唆された.また提案モデルをもとに音楽ムードの色彩による画像検索システムを開発した.本システムにより音楽とその音楽の持つ色彩感との関係性の新しい提示手法を開発した.
モーションキャプチャを用いたピアノ演奏動作のCG表現
ピアノ演奏は他の楽器と比較して高速かつ正確な手指の動きが要求されるため,仮想空間でピアノ演奏時の指の動きを表現するには,多大な時間とコスト,技術が必要となります.そこで本研究はモーションキャプチャを用いてこのような問題を解決しました.モーションキャプチャとは,実際の人間の動きを計測し,CGキャラクタで表現する方法として用いられているシステムです. まず,モーションキャプチャを用いてピアノの演奏時の手指の動きを計測します.指の関節部位に光学式マーカを貼って3次元位置情報として取得し,その情報を用いてCGアニメーションとして表現しました.さらにこれを応用し,リアルタイムレンダリングによって,外部から与えられたテンポに対応してピアノCGアニメーションを表現するシステムを構築しました.これによって,ユーザはピアノ演奏時の手指の速度を自在に操ることが可能であり,指揮的な演奏を体感することができます.
異方性透過特性の計測と織布の質感表現
CG技術はコンピュータの発達に伴い、よりリアルな表現ができるようになりました.しかし、現状の3DCG制作においてリアルな質感表現へ近づけていくのは、クリエイタによる手作業であり、大きな手間や時間がかかってしまいます.本研究では,布素材に固有の光沢や質感を忠実に再現する技術の1つとして,織布の異方性透過散乱特性に着目し,異方性透過散乱分布関数(BTDF:Bidirectional Transmittance Distribution Function)を計測し,分布関数に基づき3DCG表現を行います.またBTDFの近似モデルを提案し,近似結果と計測値の比較を行い,その妥当性を示します.最終的にはカーテンをアニメーション化し,多様な布素材を様々な照明条件下で動かしたときの質感をリアルに表現するアニメーションカタログを制作することを目指しています(デジタルファッション株式会社との共同研究).
情報統合システム Virtual-Kobe Sanda Campus
仮想空間と現実世界との一体感をだすためには,さまざまなインタラクションが必要です.また現実世界の情報を仮想空間内に反映させることにより有意義でエンターテイメント性の高いコンテンツを作成することが出来ます.本研究では,仮想空間で様々な情報を統合・表示させるシステム・V-KSCの開発を行っています.これは,3DCGで作られた仮想の神戸三田キャンパスをエージェントが案内してくれるシステムです.実時間に合わせた空の表示や,理工学部の玄関が閉まっていればVKSC内の玄関も閉まるというような実世界とVKSCオブジェクトのリンクが可能になります.また北村・川端研究室と共同でWeb情報統合・音声対話の研究も行っています.
仮想空間におけるヒューマンモーションの特徴強調と合成
人の動作をキャプチャしたデータによるCGキャラクタの動作はリアルですが,キャプチャには時間やコストがかかります.そこで,年齢,性別ごとの動作特徴を抽出し,それらを付加,強調することで新たな動作を作成するエディタを開発しました.
任意光源色下のIBRを用いたVR空間におけるオブジェクトの色変換
VR空間において,オブジェクトの色に光源色を反映させるためには,一般にはオブジェクトのスペクトル特性が既知でなければならないという点があります.しかしVR空間の物体表面にスペクトル特性を与えるのは情報量が膨大になるため現実的ではありません.そこで,本研究では分光特性が未知の物体に対して,光源色の変化を物体色に反映させる手法であるillumination color free-Image Based Rendering (icf-IBR)を利用し,VR空間内のオブジェクトの色変換を行います.icf-IBRにはデジタルカメラの感度特性と光源の分光分布が必要なため,デジタルカメラの分光感度特性の測定を行い,任意の時刻の空の色と太陽の分光分布をシミュレーションで算出をしました.この二つの情報を用いてVR空間のオブジェクトのテクスチャ画像の色変換を行います.これによりVR空間の景観画像のリアリティを高めることができます.
GPUを用いたリアルタイムCGによる質感表現
CGの描画にはオフラインとオンラインの2つがあります。映画等のオフラインレンダリングはより高品質,高精細な表現を追求し,ゲーム等オンラインレンダリングはリアルタイムかつインタラクティブな表現の実現をめざしてきました.近年のオフラインCGにおけるレンダリング技術の向上にともない,その技術のオンラインCGへの適用が求められてきています.しかし,1シーンに無限に時間を使えるオフラインCGとは違い,オンラインCGではCPUの性能という制限があるためレンダリング技術の導入は困難なものでした.そこでBRDFやBTDFのような高精細な質感をリアルタイムに表現するため,CPUの数倍~数十倍の演算処理性能を持ちプログラマブルなGraphics Processing Unit (GPU)を利用することでオフラインCGの技術をオンラインCGに導入することを目標としています。
ベイジアンネットワークを用いたコード・ヴォイシング推定システム
現在,音楽理論を利用した数多くのシステムが構築されています.その中でも,本研究では即興演奏とジャズ音楽に着目し,コードネーム付き単旋律の楽曲にジャズらしいヴォイシングを付けるシステムの研究を行っています.ベイジアンネットワークという確率モデルを用いて、楽譜に書かれている音符やコードネームなどの情報からヴォイシングモデルを作成します.そのモデルを使い,新たな入力楽曲に対してヴォイシングを出力します.音楽理論に基づいたルールだけでなく,実際にある音楽から得られた知識を応用することで新しい音楽を作り出します.
アーティストの個性を表す音楽的特徴の抽出と転写
ある特定のアーティストらしさを楽曲中で表現できるかどうかは、作編曲の良し悪しを大きく左右します。そこで、アーティストの音楽的特徴を抽出し、その特徴を定量的に扱う手法を確立したいと考えています。本研究では特に、メロディー中に含まれる「アジア性」を客観的に測ることに重点を置いています。足がかりとして、音楽学者である小泉文夫が提唱した「テトラコルド」と呼ばれる日本民謡の基礎となる音階に着目し、現代のアーティストの楽曲中にどのようにテトラコルドが使われているかを分析します。このテトラコルドが出現するパターンによってアーティストをクラス分けすることで、アーティスト間の違いを明確に示すことができるのではないかと考えています。
音楽と映像のインタラクション
音楽と映像がどのように影響しあっているかを分析することで、よりよいメディアコンテンツの制作が可能になります.テレビCMにおける色や音の要素の分析を約170種類のCMに関して行いました.音楽・映像それぞれにおいて、‡T軸が「激しい-落ち着いた」を表す軸、‡U軸が「日常的-高級感」を表す軸であるという結果が得られました.また色について、‡U軸方向に「ビビッドな色-モノトーン」が分布したり、音についても、I軸方向に音階(キー)が規則的に分布するなど、音楽や映像がCMのイメージと深く関わっていることもわかりました.これらの分析結果をもとにマルチメディア作品の創作支援システムの作成、CM採点ツールなどに応用展開していきます.
主観・客観年齢推定システムの提案
人は初対面の相手に対して年齢や性別を推定します.しかし,その年齢推定を誤ってしまい必要以上にへりくだってしまうという失敗を経験することがしばしばあると思います.本研究では,この失敗は年齢の推定を誤ったのではなく,比較する自分自身の年齢同定を誤ったのではないかという仮定をもとに,自分がイメージする自分自身の年齢を“主観年齢”と定義し,顔画像を用いた主観年齢推定方法を提案しました.実験結果によると,主観年齢は総じて実年齢より負方向に向かってシフトし,性差,年齢差があることがわかりました.さらに研究を進めることで,主観年齢によって人の社会的地位や心理的距離を表現できるようになると考えています.また平行して客観年齢の研究も進めています.
音声を用いた主観年齢システム
人は初対面の相手に対して年齢や性別を推定し必要以上にへりくだるということがあると思います.しかし実際の年齢を知ると思っていたほど年上でなかったという経験があるのではないでしょうか.これは相手の年齢推定を誤ったのではなく,自分自身の年齢認識の誤りによるものではないかと仮定し,このときの自己イメージ年齢を”主観年齢”と定義します.これまでに,顔画像を用いた主観年齢は総じて実年齢より負方向にシフトすることがわかりました.本研究では音声を用いて主観年齢の推定研究を進めています.実験結果より音声を用いた場合,顔画像とは逆の結果,つまり主観年齢は実年齢より正方向にシフトすることがわかりました.現在、研究を進めることによりこの結果の要因の分析を進めています.
脳活動計測におけるCM挿入タイミングが心的状態に及ぼす影響
テレビ番組視聴時において山場に挿入されるCMは山場が一段落してから挿入されるCMに比べて不快に感じるという人も多いかと思われます。これが視聴者の集中力を削ぐのではないかという悪影響が考えられることから、本研究ではCMの挿入タイミングが心的状態に及ぼす影響について生理指標を用いて検証することを目的としています。番組視聴時間内におけるNIRSによる脳活動を中心に、心拍・呼吸・皮膚電導・瞬目の計測を行い、CM挿入タイミングとそれに伴って引き起こされる視聴者の集中の高まりや不快などの感情の考察を行います。これによってCMの適切な挿入タイミングを訴え、生理指標を用いたコンテンツの評価につなげていくことが目標です。
ゲーム場面の構成要素と心的状態の関連性-プロ野球における球場観戦とテレビ観戦の比較-
スポーツを観戦する際に,球場・競技場などのスタジアムで観戦する場合と,TVを通じて観戦する場合とでは,自らが見渡すことができる範囲や,その場で味わうことのできる雰囲気なども含め大きく異なった要素を持っています.本研究では,プロ野球を球場で観戦する場合と,TVで観戦する場合では,それぞれどのような心的状態(興奮,落胆など)の変化が起こっているのかを考察しています.ポリグラフを用いて,被験者の心拍,呼吸の計測を行い,これより,観戦中の被験者の心的状態を同定する方法を確立します.さらに,「場」の違い(攻撃中or守備中,チャンスorピンチなど)が心的状態にどのように影響するのかについても評価を行っていきます.また,ゲーム状況の構成要素から心的状況に影響を及ぼす要因が何であるかを検討するために統計手法を用いて評価しています.
fMRIによる色聴共感覚の脳機能解析
「音を聴くと,色が見える」という現象は色聴と呼ばれており,共感覚の一種です.こうした現象は,人間の知覚特性や感覚モダリティ間の関係を明らかにする上で重要な手がかりになると期待されます.本研究では,色聴保持者において音楽聴取時に実際に色知覚に関与している脳内領域で活動が生じているかをfMRIを用いて計測します.実験では,協力者に対して8種類の音楽の呈示を行いました.分析はSPM99を用いて行い,色知覚に関与するV4,V8,V4v,V4αの各領域において,色聴保持者のみ音楽の呈示時に有意な活動を確認することができました.このことは,色聴が聴覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆しています.またこのときの活動部位は,これまでに知られていなかった新たなV4連合領域(V4,V8,V4v)であることが明らかになりました.(宝塚造形芸術大学井口征士教授,同志社大学杉尾武志専任講師と共同研究).
形状・色彩のイメージ分析によるマークデザイン支援
企業のブランド戦略のひとつにロゴマークがあります.当然,ロゴマークが企業のイメージを表す媒体である以上,より的確な使い方が必要になってきます.そこで,本研究ではロゴマークから受ける企業のイメージについて,マークの形状や色彩などに焦点を当てて分析しています.被験者の方々に,「信頼できる-信頼できない」などの種々の企業イメージについて,形状・色彩それぞれについて7段階で評価してもらいます.それらのデータを3次元空間にマッピングすることで,各イメージを表す形状・色彩がどのようなものなのかを推定します.そして,その結果をもとにマークデザインを支援するツールの作成を目指しています.
仏像の顔における曲線の特徴分析
仏像には作られた地域や年代によって異なる特徴があり,これまでは主観的な形状判断によって造形様式を記述,分類していました.我々は仏像の顔画像から抽出した特徴曲線を分析することで造形様式を分類できることを示し,造形様式の特徴を定量的に記述することに成功しました.
真珠のCG表現
物理的な構造とそこで生じる光学的現象を考慮した,真珠のCG表現技術を開発しました.この手法により生成された画像は,真珠らしさを評定する実験によって,実物の写真と同等に真珠らしいと評価される品質であることが示されました.