大規模言語モデルでインタビュー調査を自動化
ユーザニーズの多様化に伴い、個々の価値観を的確に捉え、デザインに反映させる手法が求められています。その有力な手法の一つが評価グリッド法です。評価グリッド法はインタビューを通して、個人の持つ価値観を階層的に可視化する手法で、製品開発などに活用されてきました。しかし、時間的・人的コストの高さが課題となっています。
そこで本研究では、大規模言語モデル(LLM)を用いて評価グリッド法のインタビューを自動化するシステムを開発しました。具体的には、GPT-4をベースとしたマルチエージェントシステムにより、インタビュー対話を実現。さらに、BERTを用いたクラスタリングと評価構造可視化システム(ESV)を組み合わせることで、インタビューから評価構造図の作成までを自動化しました。
システムは、発話・聴取・記録・統合の4つのエージェントで構成。各エージェントに評価グリッド法の知識やインタビュー例をプロンプトとして与えることで、適切な役割分担と対話生成を可能にしました。
神戸市の繁華街「三宮」をテーマに、人手によるインタビュー結果とシステムによる結果を比較したところ、「三宮の魅力的なところ」ではBERTを用いて75.0%の一致率を達成。提案手法の有効性が確認されました。一方、「三宮の魅力的でないところ」では一致率が低く、ネガティブなテーマへの対応に課題が残りました。
本システムにより、評価グリッド法の実施におけるハードルが大幅に下がり、ユーザーニーズの効率的な把握が期待できます。今後は、ネガティブなテーマへの対応力向上や、より多様な分野への応用が期待されます。
Publications
宮嶋大輔, 張帆, 杉本匡史, 佐々木香暖, 北野泰成, 橋本翔, 長田典子 (2024) 大規模言語モデルを用いた評価グリッド法に基づくインタビュー対話システム. 電子情報通信学会メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会 2024年度MVE賞 [PDF] [大学ニュース]