脳波によるフロー状態の客観的測定

ある作業や課題にポジティブな気持ちで没頭している状態は「フロー状態」と呼ばれ,高い水準のパフォーマンスや技能の獲得,その活動に対するモチベーションを促進する最適な体験であると考えられています.人がフロー状態にあることを定量的に測定することができれば,この体験を支援する技術の開発につながることが期待されます.本研究では,脳活動を用いたフロー状態の客観的指標の確立を目標とし,特に日常場面での計測が容易な脳波による測定を行いました.実験では,難易度の異なる暗算課題を用いて退屈,フロー,過負荷の各状態を喚起し,フロー状態喚起時の脳活動として前頭部におけるθ波の強い活動と,前頭および右中心におけるα波の中程度の活動を見出しました.これらの結果は,課題に対して最大限の認知的な努力が行われる一方,心的な負荷が抑制されているフロー状態の特徴と一致するものです.また,これらの脳波の特徴を組み合わせることで退屈,過負荷の状態とフロー状態を区別できる可能性が示唆され,脳波によるフロー状態の客観的指標の確立に向けた成果が得られました.

Publications

Katahira, K., Yamazaki, Y., Yamaoka, C., Ozaki, H., Nakagawa, S., & Nagata, N. (2018). EEG correlates of the flow state: A combination of increased frontal theta and moderate frontocentral alpha rhythm in the mental arithmetic task, Frontiers in Psychology, 9, 300. [PDF]

keyboard_arrow_up