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双曲割引(wikipedia, 12/5/28)

双曲割引(そうきょくわりびき、英: Hyperbolic discounting)は、行動経済学の用語で、遠い将来なら待てるが近い将来ならば待てないという。

今までの経済学理論では説明できない非合理的行動を説明する概念として注目されている。時間経過をx 軸、割引率をy 軸とした時のグラフが、時間とともに減少する双曲線(反比例のグラフ)になることから名づけられた。ジョージ・エインズリー・テンプル大学教授(臨床精神医学)が唱えた。

「今日と明日の違いは明日と明後日の違いより大きい」と説明されている。例えば1年後のダイエットの成果より、目の前のケーキの誘惑に負けたり、1年後のローンの負担より今のキャッシングの買い物が嬉しいということである。これを人間やその人の弱さとしてではなく、動物(人間を含む)の基本的性質として捉える

経済学を心理的・精神医学的基盤の上に乗せようとする努力の一環である。今までの経済学は「合理的人間」仮定の上に立っていたが、人間は本来非合理的なものであるということと矛盾するという根本的な問題と、経済理論と現実との不整合が目立ってきたため、それを解決するかも知れない理論と言うことで注目されている。

例1:お金の受け取り

双曲割引を実感してもらうために,お金の受け取りを考えてもらいます.

  1. 今18万円もらうか,一年後に20万円もらうかの選択
  2. 二年後に18万円もらうか,三年後に20万円もらうかの選択

行動経済学での双曲割引

「誘惑される意思」ジョーン・エインズリー著,山形浩生訳(NTT出版)
ソクラテスの発言
同じ大きさのものでも,近いときには大きく見え,遠いときには小さく見えないだろうか?
(中略)
われわれがあれこれと逡巡し,ある時点で選んだものを,別の時点で後悔するのは
「この見かけの力」の持つ欺きの技ではないだろうか?
(中略)
人々が快楽や苦痛の選択,つまり善と悪の選択においてまちがえるのは,
計測と呼ばれる特殊な知識の(中略)欠陥によるのである.
(同書,p.11)
ありがちな例
ありがちな例をあげよう.あなたは決まった時間に寝るのが嫌いだとする.
でも,起きたときには寝不足なのはもっといやだ.
だから,今朝起きたときのあなたは,昨晩夜更かしした自分を呪い,
今晩はちゃんと早めに寝るぞと未来の自分に縛りをかける.
でもここで双曲割引曲線が効いてくる.
あなたの心は報酬を求めるプロセスをたくさん抱えており,
それらはお互いに矛盾していてもそのまま生き残るようになっていて,
打ち消しあわずに独立して存在し続ける.
だから,結局夜になって朝がまだずっと先の時になると,やっぱり夜更かししようと思ってしまう.
長期的な報酬から言えば早く寝る方がいいのだが,
それを実現するようなインセンティブを夜の自分に対して提示できない限り,
この状態は続く.
(同書,p.63)

例2:先送り戦略

これは時間の価値に対しても成り立ちます.その結果が「先送り戦略」になる訳です.では,どのように「先送り戦略」に陥らないようにすればいいのでしょう?

スマートな人とナイーブな人(池田新介,日経12/3/26朝刊)

双曲的な人は,立派な蓄積や摂生の計画を立てても,実行に移す段階になると,それを先延ばしにして現在志向的な行動をとりたくなる.それが自滅的な選択につながる.

ただ,先延ばしの誘惑を感じても負けずに前に立てた計画を実行する人もいる.面倒な仕事を持ち越しても,いずれはまた同じ窮状に陥ることを知っているからだ.経済学では,将来の衝動的な自分を正確に自覚している主体を「賢明(スマート)」な意志決定者,自覚しない人を「単純(ナイーブ)」な選択者という.

関連する単語
Smart vs Naive,学習におけるデフォルト,忘却曲線,チャンク,ポートフォリオ,守破離,箸の上げ下ろし,永平寺
Last modified:2019/04/03 13:12:51
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References:[CompAInfo] [CompAInfo19] [CompAMath14] [Documentations_RubyKansai17]