MindSet&Flow
キャロル・ドゥエックの「心持ち理論」
多くの学生諸君は「やればできる」と思ってるよね.でもどこまで「やればできる」を信じて実践しているかを尋ねてみると実際は「でもやってない」で終わっている人も.そういう人の中には,「能力は生まれつき」と思ちゃってる人もいるかも.能力を「固定(fixed)」していると見なすか,「成長(growth)」していくと見なすかによって,「心の持ちよう(mindset)」がどれだけ違うかをキャロル・ドゥエックは,次のように対比してます[1-3].
心持ち | こちこち | しなやか |
fixed mindset, | growth mindset | |
固定知能観 | 拡張知能観 | |
褒め方 | 能力を評価 | 努力を評価 |
ゴール(あるいは目標) | 結果ゴール(能力のお墨付きが欲しい,成功しても失敗しても不安) | 過程ゴール(どれだけ伸びたか,否定的な感情が減っていく) |
努力の意義 | 能力のなさの証明 | 成功のための必須項目 |
反応(失敗した時の) | 感情的になり目を背ける | どう感じたかよりも何かを学ぼうとする |
戦略 | 1つのやり方に執着する | いろいろやる(とんでもないぐらい) |
なんか「やればできる」の中身がちょっち違わない? こんなしなやかな心持ちは,「生まれつき持っている考え方」と言うよりも,技能を獲得するために身につけるべき心のもちよう,つまりスキルなんですが.そうは言っても,なかなかすぐには心の切り替えができそうにないよね. それが簡単に実践できる「フロー状態」をご存知?
チクセントミハイのフロー状態理論
「フロー状態」ってのは,米国のM.チクセントミハイが提唱した心理状態で,何かの作業をするときに,
- 明確な目標
- 迅速なフィードバック
- スキルとチャレンジのぎりぎりの限界に挑戦する
ことによって,「集中が焦点を結び,散漫さは消滅し,時の経過と自我の感覚を失う」という状態です[4].フロー状態を模式的に示したのが次の図です.
フロー状態のスキルとチャレンジの関係を示す模式図. |
単純で低いレベルのスキルでも,時間を制限したり,リズムにあわせるというチャレンジを与えることで,フロー状態に入ることができます.続けているとスキルがあがり,図の右方向に移動し,作業が退屈になってきます.このときより難しい課題に挑戦することによって新たなフロー状態に入ります.一方,テニスなんかの対戦型スポーツでは相手が手強いと図の上方向に移動し,不安な状態となります.しかし,それを克服するためにスキルをあげるとより高度なフロー状態に入ります.
チクセントミハイは
挑戦目標の達成に取り組んでいる時が,生活の中で最も楽しい時である.心理的エネルギーの統制を達成し,それを意識的に選びとった目標に向けた人は必然的により複雑な存在へと成長する.このような人は能力を高め,より高度な挑戦対象へと近づくことによって,しだいに非凡な能力をもつ人間に変わっていく.(p.8)
と説いています.
はまる
タイピングは,このフロー感が得られる典型的な作業なんよ.
- キャロル S. ドゥエック著, 今西 康子訳『「やればできる!」の研究—能力を開花させるマインドセットの力』草思社 (2008).
- チップ&ダン・ハース著,「スイッチ」早川書房,2010MindSetbyHeath.pdf.
- ダニエル・ピンク著「モチベーション3.0」講談社,2010MindSetbyPink.pdf.
- M. チクセントミハイ著, 今村 浩明訳,「フロー体験 喜びの現象学」世界思想社 (1996/08)
Keyword(s):
References:[学習の小ねた] [FirstYearEducation12] [FirstYearEducation13] [KnowledgeStructureExampleI]