FeelingOfKnowing

「既知感」についての考察を始めるにあたって,次の段落を普通の速さでお読みいただきたい.飛ばし読みをしたり,途中で止めたりしないこと.この体験は,一度説明を知ってしまうと繰り返すことができないため,読み終えたら少し時間をとって,自分でどう感じたかを自問しよう.そして説明の言葉を聞いた後,もう一度段落を読み直す.その際,自分の心の状態と,この段落についての感じがどう変わったかに注意を向けてほしい.

新聞は雑誌よりよい.海岸は道路よりよい場所である.最初は歩くよりも走るほうがよい.何度か試みる必要があるかもしれない.ある程度の技術はいるが,学ぶのは簡単だ.小さな子どもでも楽しめる.一度うまくいったら,障害はほとんどない.鳥が近づきすぎることはめったにない.しかしすぐに雨に濡れる.同じことをする人が多すぎると問題が起こることがある.かなり余裕が必要である.障害がなければ,非常にのどかである.岩はいかりの代わりになる.しかし,いったん切り離されてしまうと,二度目のチャンスはない.

ご理解いただけただろうか.それとも意味のない文章だと思われただろうか.可能性のある説明を心が探っているのを感じておこう.さて,次の言葉を聞いたとき,何が起こるかを見てみよう.

謎の単語

ここで前の段落を読み直して,最初に感じた何かが欠けているという不快感が,正しいという快感に変わるのを感じてほしい.すべてがぴたりとはまり,一文一文がきちんと意味を持つ.もう一度読み直してみよう.もう,理解できないという感覚を取り戻すことはできない.一瞬のうちに,しかるべき意識的な施策をすることもなく,文章は不可逆的に<既知感>に満たされる.


確信する脳「知っている」とはどういうことか,ロバート.A.バートン,(河出書房新社,2010).

Last modified:2016/07/19 12:42:15
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