• 概要

    本研究では議論システムを用いた説得対話モデルにおいて,対話相手の知識の 予測という概念を導入する.知識予測の導入により,説得のための戦略を考え ることができる.さらに知識の予測は,相手の嘘を指摘する際にも利用できる. この対話モデルでは,各エージェントの知識が対話の進行とともに更新される. すなわち,議論システムは現在の知識から構成され,受理可能論証の内容がそ の時点でのエージェントの信念とされる. 本研究では,まず,議論システムに 基づき,相手の知識予測を用いた嘘を含む対話モデルを提案し,このモデル上 で説得に失敗しないよう導く戦略を提案する. そして予測知識と実際の相手の 知識が等しい時,その戦略を使用して説得に失敗しないための条件を明らかに し,この戦略上で説得に失敗しないためには,相手の予測知識として何を含む べきかについても議論する.次に,対話モデルにプロトコルを追加することで, エージェントが嘘を指摘できるようにモデルを拡張する. このモデルにおける 対話の終了条件と結果判定を定義し,説得者が嘘をついて説得に成功する場合 と,嘘をついたことがあばかれてしまう場合の対話例をこのプロトコルを使っ て表現する. 以上により,相手の持つ知識の予測を導入することで,戦略提案 や嘘指摘等,説得対話のモデル化において表現をより豊かにすることができた.
  • 発表論文

    "議論構造の変化の形式的表現--秘密を持つエージェントとの対話--," 人工知能学会第29回全国大会, http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2015/proceedings, May, 2015. "What should an agent know not to fail in persuasion?" 13th European Conference on Multi-Agent Systems (EUMAS-AT2015), December, 2015. "相手の知識モデルを使用した議論システムに基づく戦略的説得対話," 電子情報通信学会知能ソフトウェア工学研究会, KBSE2015-62,pp.79-84, March, 2015.