概要
近年,「エージェント」という言葉が,情報,通信研究の分野で広く使われている.
コンピュータソフトウェアにおけるエージェントとは,一般的には,ユーザや他のプ
ログラムの「代理人」として働くソフトウェアモジュールのことをさす.
現在,このエージェントという言葉には厳密な定義はなく,研究者によって様々な
定義が存在するが,その最も重要な性質として,エージェントは「自律性」を持つと
考えることができる.自律性とは,環境に応じて自律的に行動ができる能力である.
インターネットの急速な発展により,移動性を重視したモバイルエージェントに関
する研究が特に盛んであるが,本研究では,複数のエージェントによる協調的な動作
といった部分に焦点をあて,マルチエージェントによって効率的に問題を解決するた
めの手法を提案した.
マルチエージェントによる問題解決では,各エージェントが環境に関してより多く
の情報を持っていることが好ましいが,自身の属する環境が動的に変化するなかで,
それら情報をエージェントに把握させることは困難である.また,エージェント間の
通信によってそれらの情報を完璧に把握させようとすることも,システムへの負荷を
考慮すると現実的な方法とは言えない.
そこで本論文では,エージェントが自身に直接関係する限られた情報しか持ってい
ない状況でも,少ない通信で問題を解決するための手法を提案し,状況の異なる2つ
の問題に本手法を適用した.
1つは,プリンタの制御問題への適用であり,プリンタにおける各クライアントか
らの印刷要求をエージェントとして,効率的な印刷を実現する印刷タスク制御システ
ムを構築した.
もう1つは,各エージェント間に強い相互作用がある複雑な環境での問題への適用
であり,従来,人工知能研究の題材として数多く用いられてきた,ブロックの積み替
え問題に本手法を組み込み,その有効性を示した.
発表論文
"強相互作用を持つマルチエージェントによる問題解決",
情報処理学会第65回全国大会論文集,Vol.1, pp.301-302, 2003.
"An Intelligent Access Dispatching Mechanism Using Multiagent Framework,"
The IASTED International Conference on Artificial Intelligence
and Applications (AIA-2004), pp.166-171, 2004.
"Multiagent Planning with Incomplete Information in an Environment with
Dense Interactions: A Case Study,"
K.G.Studies in Computer Science, Kwansei Gakuin University, pp.3-11, 2004.