• 概要

     近年,ノートPCやPDAなどの携帯端末,無線LANやBluetoothなどに代表される無線 通信装置の発展・普及に伴い,端末同士が基地局を介さずに通信し,特定の場所に集 まった携帯端末同士が一時的に構築するネットワークであるモバイルアドホックネッ トワーク(Mobile Ad-hoc NETwork , MANET)の構築が現実的なものになってきた.  MANETには,ノードの移動が自由,ネットワークへの参加・離脱が自由,直接通信 できない端末とも他の端末を経由して通信可能(マルチホップの通信)といった特徴 があり,現在MANETの特長を活かしたソフトウェア,アプリケーションやミドルウェア, ルーティングプロトコルなど様々なものが考案されている.これらは以下のような特 徴を持っている. ・マルチホップ通信を前提とする. ・トポロジ変化によって動作が影響される.  MANETソフトウェアに限らず,ソフトウェアの開発においては,アルゴリズム設計・ コーディングの各段階における動作検証が不可欠である.通常,ソフトウェアの基礎 となるモデル(アルゴリズムなど)の段階で,シミュレーションによる評価が行われ る.この後,完成したソフトウェアを実環境で動作確認する.  シミュレーションによる評価は,特にMANETを想定した環境では,マルチホップ通 信,トポロジ変化を容易に実現できるため,実験・評価が容易に行える利点がある. しかし,実世界への適応を考えた場合,起こりうる問題が考慮されていないことがあ る.  実際に,近年MANET環境でのルーティングプロトコルは数多く提案され,さらにシ ミュレーションによってその効果が示されてきているが,実世界への適応段階ではさ らに考慮しなければならない問題を多数含んでおり,それらの問題を解決しなければ ならないという要求が高まっている.  本論文では,このような流れをふまえ,従来提案されているモバイルエージェント を用いた動的ネットワークルーティング手法をベースとして,実世界への適応を考慮 した機能の拡張を目的としている.  実際には,実世界で起こりうる問題の1つである,端末電源のON/OFFを考慮したア ルゴリズムを提案・実装し,これを従来手法に組み込んでその効果をシミュレーショ ン実験によって示す.
  • 発表論文

    "マルチエージェントを用いた動的ネットワークルーティングシステムの拡張および効率化", 情報処理学会第65回全国大会論文集,Vol.1, pp.311-312, 2003. "マルチエージェントを用いた動的ネットワークルーチングシステムの拡張および効率化", 電子情報通信学会論文誌, Vol.J86-B, No.11, pp.2433-2436, 2003.