音楽と脳
@ 音楽聴取時の脳活動
「音楽家は目的によって "聞き方"
を変えることができる」と言われています.このような聞き方の違いが存在することを実証するために,近赤外線分光法(NIRS)による脳活動計測実験を実施しました.
実験では,被験者(音楽家)に聴かせる音刺激として,(1)
ピアノ曲,(2) ピアノ曲を250〜350
msの断片に分断し,ランダムに並び替えたもの(スクランブル刺激),の2種類を用意して,被験者がピアノ曲やスクランブル刺激を聴いている時の脳活動を計測しました.被験者には,(a)
単に聞き流すこと,あるいは,(b) フレーズの境界を探すこと,の2つの課題を要求しました.
Fig. 1
に,NIRSによる脳活動計測の結果を示します.Fig. 1A は,「聞き流している状態 (listening)」 と「フレーズの境界を探している状態
(detection)」との差を示しています.Fig. 1B は,「ピアノ曲 (original)」と「スクランブル刺激
(scramnbled)」との差を示しています。この図が示すように,聞き方(聞き流し vs フレーズ探索)や刺激の構造(ピアノ曲 vs
スクランブル刺激)によって脳の活動が異なりました.
この結果は,音楽家は目的によって聞き方を変えることができる,ということを支持すると考えられます.
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Fig. 1. 聞き方と曲の構造による脳活動の差の有意確率をチャンネル別に示した図. A: 「フレーズの境界を探している状態 (detection)」と「聞き流している状態 (listening)」との脳活動の差. B: 「ピアノ曲 (original)」と「スクランブル刺激 (scrambled)」との脳活動の差. 図中右の枠内に,NIRS計測部位(前頭部)と計測チャンネルを図示する. |