テレビゲームによる心身への影響
A 対人ゲームプレイの効果
テレビゲームは複数人数で一緒にプレイすることもできます.複数人数で一緒にプレイする場合には一人でプレイする場合とは異なる楽しみがあると考えられます.この楽しみは,一緒にプレイする人との人間関係(知人・他人,友好的・敵対的,など)に依存するかもしれません.また,逆に,ゲームプレイを通じて,一緒にプレイする人の印象が変化することも考えられます.
この実験では,テレビゲーム(マリオブラザーズ,任天堂)を2人でプレイしている時に,相手が協力的なプレイを行う場合と妨害的なプレイを行う場合とで,相手に対する印象がどのように変化するかを検討しました.
実験の結果,ゲームプレイを通じた相手に対する印象の変化が,協力条件(相手が協力的なプレイを行う場合)と妨害条件(相手が妨害的なプレイを行う場合)とで異なることが分かりました。たとえば,「人のよい−人の悪い」という質問項目に関して,協力条件の場合には相手の印象は変化しませんでしたが,妨害条件の場合には相手に対する印象が悪くなりました.この結果は,テレビゲームのプレイ態度(協力的・妨害的)によって,その人に対する人物評価が変わり得ることを示唆します.
今後の検討課題として,(1)
テレビゲームプレイによって形成された印象が,テレビゲームプレイ以外の場面でも保持されているのか,(2)
テレビゲームやゲームジャンルによって,プレイ態度による印象形成への影響が異なるのか,などが考えられます.
Fig. 1.
2人でプレイするテレビゲーム(マリオブラザーズ)において,相手のプレイ態度(協力的・妨害的)によって,相手の印象が変化する.
協力条件においては「協力的である」との印象が生じ,妨害条件においては「妨害的である」との印象が生じた.この結果は,実験手続きの妥当性を支持する.
その上で,たとえば,「人のよい−人の悪い」という質問項目に関しては,協力条件においては相手に対する印象が変化しないのに対して,妨害条件においてはゲームプレイによって「人の悪い」という印象に変化した.