顔の認知と "N170"
我々が顔を見たときには,"N170"
と呼ばれる脳電位が発生します.このN170を指標として,顔の認識の仕組みを探ることができます.
ここでは,コンピュータ・ディスプレイ上に呈示される顔パタンを識別する実験の例を紹介します.
Fig.
1にN170の頭皮上分布,Fig. 2にN170の例,Fig.
2に様々な顔パタンに対するN170の変化(頂点潜時と頂点振幅の変化)を示します.
この実験の結果は,顔パタンが呈示されてから170ms後には既に,顔パタンの識別が始まっていることを示します.
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Fig. 1. 顔パタンがディスプレイ上に呈示されてから約170ms後の頭皮上の電位分布.左右の後側頭部に顕著な陰性電位(N170)が生じている. |
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Fig. 2. 左後側頭部 (P9) と右後側頭部
(P10)に配置した電極で記録されたN170の例(矢印).原点Oは顔パタンが呈示された時点を示す.顔パタン呈示後170ミリ秒前後でピークになる電位変化の頂点潜時と頂点振幅を計測する. |
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Fig. 2. 顔パタン(A 〜 J) に対する,(a) N170頂点潜時,(b) N170頂点振幅の被験者間平均 (N = 16).顔パタンのパーツが同じであっても,その配置によってN170の頂点潜時と頂点振幅が異なる.このことは,顔パタンが目に映ってから170ミリ秒後には,顔パタンの違いが脳内で処理されていることを示す. |