1. 乱数
乱数は, ゲームの他, シミュレーションや数値計算に利用できる.
C 言語では, 次のような関数や定数を通じて乱数を利用できる.
- rand() は乱数を一つ発生する関数であり,
呼び出される度に整数値の乱数を返す.
- 乱数の最小値は 0 で, 最大値はシステムによって異なる.
この最大値は RAND_MAX により知ることができる.
- この乱数は完全な乱数ではなく疑似乱数であり,
プログラムが起動される毎に同じ乱数系列となる.
これは, 疑似乱数が, ある「種」と呼ばれる初期値から始め,
同じ変換を次々に適用して乱数系列を生成しているためである.
- この「種」を設定するのが srand(整数) 関数である.
この整数値を変えると異なる乱数系列を得ることができる.
srand() の呼び出しは省略できる. この場合の種はデフォルト値になる.
例題 9.1
擬似乱数の種を入力し, 擬似乱数の最大値 (RAND_MAX) を出力した後,
その種に基づく擬似乱数を10個発生させるプログラムを作成せよ.
| ex91.c |
|---|
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h> /* 乱数を使うときには stdlib.h が必要 */
int main( void )
{
int i, seed, r;
/* 乱数の最大値の出力 */
printf("RAND_MAX = %d¥n", RAND_MAX);
/* 乱数の「種」の設定 */
printf("乱数の種となる整数を入力して下さい > ");
scanf("%d",&seed);
srand(seed);
/* 乱数を 10 回発生させて出力 */
for (i=0; i<10; i++) {
r = rand();
printf("%d¥n", r);
}
return 0;
}
|
課題 9.1
例題 9.1 のプログラムをコンパイルして実行し, 次を確認せよ
(結果をレポートに手短にまとめよ).
- 演習室のシステムでは, 乱数の最大値 RAND_MAX はいくらか?
- 同じ種を設定した場合と異なる種を設定した場合で,
乱数系列はどのようになるか?
課題 9.2
自然数 k を入力し,
1 〜 k の乱数を 20 個発生するプログラム irand.c を作成せよ.
0〜k-1 の乱数ではないので注意 (出力に 0 が混じっていたら間違い).
(ヒント) 0〜k-1 の乱数を生成して, それに 1 を足せば, 1〜k の乱数が得られる.
課題 9.3
自然数 n を入力し,
区間 [0,1] の実数の乱数を n 個発生するプログラム frand.c を作成せよ.
(ヒント) rand() で発生した乱数を RNAD_MAX で割れば, 0〜1 の間の乱数が 1 つ生成できる.
ただし, 結果が double 型になることに注意. もしも乱数が 0 しか出なかったら, 何かを忘れている
( 課題C2 の「整数の除算」参照).
2. 乱数による積分
乱数を用いて積分を行うことができる.
モンテカルロ法と呼ばれ, 解析的に求められない定積分を計算計算するのに用いられる.
例題 9.4
0≤x≤1, 0≤y≤1 なる座標 (x,y) を乱数により100万回発生させ,
これが x2+y2≤1 を満たしている確率を求めよ.
これは単位円の 1/4 の面積に相当するので (図を書いて考えてみよ),
これを 4 倍することにより, 円周率を求めることができる.
| ex93.c |
|---|
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int main(void)
{
int n_trial = 1000000;
int n_inside;
int i;
double x, y;
double r;
double pi;
n_inside = 0;
for (i=0; i<n_trial; i++) {
x = (double) rand()/RAND_MAX;
y = (double) rand()/RAND_MAX;
if (x*x+y*y<=1) {
n_inside++;
}
}
r = (double) n_inside/n_trial;
printf("r = %g¥n", r);
pi = 4 * r;
printf("pi = %g¥n", pi);
return 0;
}
|
実行例
$ ./a
r = 0.785524
pi = 3.1421
|
課題 9.4
関数 y = √x (x の平方根) の区間 [0,1] の定積分を乱数を用いて求めるプログラム
integral.c を作成せよ.
解析的に求めた結果との比較をレポートに記せ.
(ヒント) 例題と同じように, 0≤x≤1, 0≤y≤1 なる座標 (x,y)
を乱数により発生させ, これがある不等式を満たす確率を求めればよい.
どんな不等式を満たせばよいかは, 図をかいて考えてみよ.
3. ゲーム
画像が出せないのでつまらないが, 工夫次第でそれなりのゲームが作れる.
課題 9.5
下記のプログラムの概形と指示に従って,
次のようなゲームのプログラム dice.c 作成せよ.
- 最初の所持金を 10 とする.
- サイコロの 1〜6 の目のうち 2 つを選んで所持金を掛ける.
- サイコロを 1 個ふる.
- 当たると掛金の 3 倍が支払われる. 外れると掛け金は没収される.
- この試行を 10 回繰り返すか所持金が無くなれば, 終了.
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int main( void )
{
int my_money = 10; /* 所持金 (初期値10) */
int i; /* 繰り返しの回数 */
int kakekin; /* 掛金 */
int choice1, choice2; /* 掛ける出目2個 */
int dice; /* サイコロの目 */
for (10回繰り返すか, 所持金が無くなるまで) { /* (注1) */
所持金の表示;
掛金の入力;
掛ける出目 2 個の入力;
printf("%d と %d に %d かけました¥n", choice1, choice2, kakekin);
printf("サイコロの目は ...¥n");
sleep(1); /* (注2) */
dice = 1〜6 の乱数;
printf("%d です¥n", dice);
if (当たり) {
当たったことを表示し, 所持金を計算.
}
else {
外れたことを表示し, 所持金を計算.
}
}
終了のメッセージ (適当に);
return 0;
}
|
- (注1) 10回繰り返すだけなら for (i=0; i<10; i++) であるが,
さらに条件を加えたい場合の書き方は,
課題C8 の「3. 条件によるループの打ち切り」参照.
for の 2 番目の項目は, 「繰り返しを継続する条件」であって,
「繰り返しを打ち切る条件」でないので間違えないように.
- (注2) sleep(整数) はその秒数だけ実行を停止して待つ, という関数.
(整数値しか使えないので, 0.5秒待つというのはできない.)
ゲームの進行や表示が見やすくなるように各自工夫して挿入せよ.
