概要
図や画像などの空間データは,一般に座標やサイズのように定量的な情報
として与えられ,それを基に計算や推論を行なう.それに対して,描かれて
いるオブジェクトの形,色やオブジェクト同士の相対的位置関係のように定
性的な情報を基に推論を行うのが定性空間推論である.定性的に情報を扱う
ことによって,必要な情報のみを取り出すことができ,計算量の削減が期待
できる.しかし,定性空間推論の現実的な応用は,ほとんど示されていない.
本研究では,定性空間推論の応用として,マルチウインドウの自動配置シス
テムを目指し,その枠組みとして矩形を対象とする定性空間推論を提案する.
矩形の重ね合わせを行う際に必要となる,どの部分を隠す/隠さないかとい
う情報のみに着目して矩形をシンボリックに表現する方法を考案し,それを
基に二通りの重ね合わせ方についての推論方法を定式化した.
これにより,今まで定量的にしか扱われていなかったオブジェクト同士の
重ね合わせに対して,定性的に扱える新たな枠組みを確立した.
発表論文
``矩形を対象とする定性空間推論について,''
人工知能学会第23回全国大会, June, 2010.
``矩形同士の重ね合わせについての定性空間推論,''
人工知能学会研究会資料 SIG-FPAI-B002,
pp.7-14, September, 2010.
``Symbolic Representation and Reasoning for Rectangles with Superposition,''
The Third International Conference on Advances in Databases, Knowledge,
and Data Applications (DBKDA 2011),
pp.71-76, January, 2011, (Best Paper Award).
``矩形同士の重ね合わせについての定性空間推論システムの拡張,''
日本ソフトウェア科学会第28回大会, September, 2011.
``矩形同士の埋め込み型重ね合わせについての定 性空間推論,''
電子情報通信学会技術研究報告: 知能ソフトウェア工学研究会,
KBSE2011-69, pp.13-18, March, 2012.
``Superposition of Rectangles with Visibility Requirement:
A Qualitative Approach,''
International Journal On Advances in Software,
Vol.4, No.3&4, pp.422-433, April, 2012.