概要
本研究は,幹線道路において,車線変更を行う情報と脇道から幹線へ進入する情
報をその影響を受ける車が事前に共有することにより交通流の円滑化を図るもの
である.
現在,車車間や車道間通信に関する研究として,混雑情報の共有や信号機のタイ
ミングを変えることにより交通流の円滑化を図るものが多くある.ただ,交通状
況をミクロな視点で考えてみると,急な割り込みや隣り合って走行する車が同時
に車線変更を行う場合,後続車に徐行や急停止を強制させ,交通流の滞りを生む
場合がある.したがって,車線変更の情報を前もって共有させることにより,車
の走行を理想的なものにできないかと考えられる.しかし,車線変更と車車間通
信を結びつけた従来の研究では,安全性の重視や,シミュレータ上で現実の交通
状況にいかに近づけるかが主な目的だった.
本研究では,安全な走行は勿論のこと車線変更と全体の交通流を円滑にするべく,
ウィンカーによる車線変更の意思表示をする以前に,車線変更情報を隣接する車
線にいる車に受け渡し,十分な車間距離を提供するモデルを提案する.この車線
変更モデルを脇道のある道路において,脇道に出入りする車への通信を含むモデ
ルへ拡張する.双方の交通シミュレータを実装して試行を行い,モデルの有効性
を調べる.
結果としては,車線変更,脇道から幹線への進入に関する双方の通信を伴うモデ
ルが有効であるということがわかり,提案手法によって交通流の円滑化が図れる
ことが示された.
発表論文
``車車間通信を用いた車線変更にともなう交通流の円滑化に対する考察,''
人工知能学会第22回全国大会, June, 2008.
``車車間通信を用いた車線変更にともなう交通流の円滑化を図るモデルの提案と実装,''
情報処理学会研究報告, 2009-MPS-73, pp.29--32, March, 2009.
``Lane Changing Model with Early Communication of Intentions,''
International Conference on Agents and Artificial Intelligence,
pp.455-461, January, 2009.
``車車間通信を用いた車線変更にともなう交通流の円滑化を図るモデルの提案と実装,''
情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用,Vol.2, No.3, pp.110-127, December, 2009.