概要
本研究では,矩形を対象とした定性空間推論について述べ,その応用システムを
示す.定性空間推論は,図や画像の持つ特徴を抽出して記号で表現し,それを基
に推論を行うものである.従来の定性空間推論は対象とする図に大きな制限をか
けず,単純な記号を用いて図形を表現する.つまり,様々な図や画像を簡単な記
号で表現する事が可能である.しかし,そのような定性空間推論は扱う事のでき
る情報量が少ないため,高度な推論は困難であり,実用的な応用システムはほと
んど示されていない.
本研究は,対象とする図を2 次元平面上の図に前面,背面を加えた準3 次元空間
の矩形に制限する事によって,表現の単純性を維持しつつ,扱える情報量を増や
し,実世界において応用可能な定性空間推論の枠組みを提案する.この枠組みで
は,対象となる図を領域と線分という単純な2 つの基本要素と,それらの関係に
よって記号表現する.また,対象となる図の記号表現と各領域の表示に関する制
約条件が与えられた時,領域の可視,不可視や領域間の重なりを導く推論機構に
ついて述べる.
また,本研究はこの枠組みをマルチウィンドウ環境におけるウィンドウの表示へ
応用したシステムを作成した.これはユーザにとって必要な部分を見せ,不必要
な部分をできるだけ隠すようなウィンドウの配置を定性空間推論によって導き,
自動でウィンドウ操作を行うものである.本システムでは,定性空間推論による
推論機構はProlog 言語で,ウィンドウの情報から記号表現への変換,および推
論結果からウィンドウの配置を表示する部分をJava 言語で実装している.
発表論文
``Drawing a Figure in a Two-Dimensional Plane for a Qualitative Representation,''
Conference on Spatial Information Theory: COSIT'07, pp.337-353,
Springer-Verlag, September, 2007.
``凹凸情報と接触パターンに基づく定性空間表現,''
情報処理学会第67回プログラミング研究会発表資料, January, 2008.
``可視情報付き領域を基礎とする定性空間推論の提案とその応用,''
日本ソフトウェア科学会第25回大会, September, 2008.
``Qualitative Spatial Representation Based on Connection Patterns and Convexity,''
AAAI08 Workshop on Spatial and Temporal Reasoning, pp.40-47, July, 2008.
``矩形領域に基づく定性空間推論の提案と実装,''
情報処理学会第72回プログラミング研究会発表資料, January, 2009.
``Rectangle Reasoning: A Qualitative Spatial Reasoning with Superposition,''
23rd Florida Artificial Intelligence Research Society Conference (FLAIRS-23),
to appear.