概要
アドホックネットワークにおける輻輳制御機能をもつエージェントを使ったルー
ティング手法を提案する.
アドホックネットワークのルーティング手法として,自律性をもつモバイルエー
ジェントを用いたものが注目されており,その1つにテーブルエントリ評価モデ
ルを用いた手法がある.このモデルでは,モバイルエージェントがネットワーク
上を動きまわり,ルーティングに必要な情報を収集して,各ノードにあるルーティ
ングテーブルに最新情報を書き込む.パケットはこのテーブルを見ながら自律的
に行き先を決定して目的地へとすすむ.このモデル上のルーティング手法はいく
つか提案されているが,このモデルは実世界で起こりうる問題については考慮し
ていない。本研究では、パケットの輻輳問題を取り上げ、それを解決するために
エントリ評価モデルを拡張した輻輳モデルにおけるルーティング手法を提案する.
輻輳モデルでは,各ノードが処理できるパケット数に制限を設け,パケットの待
ち行列数をルーティングテーブルのメトリックとして追加する.提案するルーティ
ング手法では,この情報を利用することでパケットは混雑を避けた経路をとるよ
うになり,ネットワーク全体として輻輳が起こりにくくなる.
本研究では,Java を使って輻輳モデルを実装し,その上で従来の手法と提案手
法によるルーティングのシミュレーション実験を行い結果を比較した.さらに,
エージェントを使わない代表的なルーティング手法である AODV によるルーティ
ングとも比較した.いくつかの条件下で実験を行った結果,提案手法の有効性が
示された.
発表論文
"輻輳問題を考慮したモバイルエージェントによるアドホックネットワークルー
ティング," 電子情報通信学会 研究報告, IN2006-184, pp.25--30, March, 2007.
"A Multi-Agent Routing Protocol with Congestion Control for MANET,"
Proceedings of 21st European Conference on Modelling and Simulation (ECMS),
June, pp.164--169, 2007.