概要
会議室の予約や授業の時間割の作成は非常に手間のかかる作業であり,これ
らの問題をエージェントを用いて自動的に解決させることは有意義なことであ
るとらえられる。しかし,この問題は一般に NP 困難とされ,その解決にはさ
まざまなアプローチが存在するが,いずれも計算量と解の妥当性については改
良の余地がある.
本研究では,参加者をエージェントとみなし,各エージェントが自らの要望
を言い合うことによって,全員が満足できるスケジュールを得る連鎖的解決法
を提唱する.この方法では,最初に任意の案を与え,それに不満を持つエージェ
ントが自分の要求を満たすような代替案を提案する.代替案を生成する主導権
を連鎖的にまわしながら,徐々に全員が満足するような解に近づけていくもの
である.このプロセスがある程度すすむと,最後に全員の要求を聞いて調整を
行う.
この方法によって,全エージェントの要望を満たす解がある場合は,できる
だけ少ない交渉回数でそれを求め,解が無い場合も,各エージェントが譲歩し
て要望を弱めることにより,できるだけ少ない交渉回数で合意点に達すること
ができる.
この方法の特徴は,参加者全体が問題解決に取り組まなければならないよう
な問題に対して,2者間の交渉を連鎖的に行うことにより,参加者全体を交渉
に巻き込みながら問題の解決をはかることである.これによって,従来解決で
きなかった2者間の合意形成による交渉だけでは解決できない問題に対しても
最適解を求めることができた.
発表論文
"マルチエージェント間の交渉による修正の連鎖を用いたスケジュール作成",
情報科学技術フォーラム(FIT)2003論文集,pp.411-412, 2003.