私の共感覚体験

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 私は音(調性)や数字・文字などに色を感じます。感じる色を文字にすると下記のようになります。
  • 調:C(白),D(黄色に近い橙色),E(黄緑),F(ピンク),G(青),A(赤),B(えんじ色)
    ★ これは私が論文中で述べた典型的なマッピングにF以外該当しており,私自身もびっくりしました.

  • 数字: 1(白),2(橙色),3(水色),4(赤),5(黄色),6(紺色),7(レモン色),8(緑)・・

  • アルファベット: A(朱色)B(緑)C(ブルーがかったグレー)D(えんじ色)E(赤)F(クレヨンの肌色)・・・
    ★ ひらがなや漢字にも色を感じます。ただし形状の構造が複雑になってくると,色を感じなくなってきます。

 小さい時から色は記憶と深く関わっていました。電話番号・ナンバープレート・歴史の年号などを記憶するのが好きで,その記憶と検索にはいつも色の並びを使っていました。  よくある年号の語呂合わせを使うのは嫌いで,絶対に使いませんでした。その理由は「汚いから」だったのですが,今となって考えると,語呂を数字に無理矢理関連づけることで色のイメージが壊れてしまうからだったからではないかと思います。例えば"大化の改新"の645年は大好きな年号でしたが,それは"紺+赤+黄"の並びがきれいだったから,というような覚え方でした。また自宅の電話番号が,市外局番がとてもきれい(0742)だったのに,市内局番が汚い(43:赤+水色)のがとても不満だった,という風に感じていました。

 調性についても,私は音楽の専門教育を受けていましたが(絶対音感もありますが),作曲をする際に「ブルーの曲('Gmajor)を作ろう」とか,テンションコードのコードネームをあてる試験で「このピンクと肌色のコードはなんだったっけ?('F6)」と思い出すように,音の響きと色のイメージが深く関係していました。

 このような色を感じて色で覚えることは小さい頃からの習慣で,自分にとって当たり前のことだったので,これが特殊なことだとは意識したことがありませんでした。研究の仕事についた後に,こうした現象が色聴と呼ばれていて,限られた人にだけ意識されることを知りました。しかしなぜ,ある対象に対して固有の色を感じるのか,過去の体験を思い起こしてみても思い当たることはありません。またこの頃にはもう,小さいときほど強く色を感じなくなっていました。

 私がいま実験に協力していただいている共感覚保持者の人は,2人とも女性で現役の演奏家です.Nさんはピアニストで,6歳の時に「メヌエット(ト長調)は青色(の曲)だね」とお母さんに言ったことを覚えているそうです.また今でも演奏会で,弾く曲の調に合わない色のドレスは着ないということです.Sさんはチェロ奏者で「波みたいにうにょうにょして」色がグラデーションで見えるそうです.他にも漢字にも色が見えて,しかもお姉さんも同じように漢字に色が見えるのだそうです.

 私の元共同研究者の息子さんは今は中学3年生ですが,音楽を聴いて色が見える?という問いに対して,「見えるよ,でも前はもっとよく見えたけど,今はあんまり見えない」と答えたそうです。彼も小さい頃から音楽の専門教育を受けていて,今は受験で中断してるそうです.