私たちの研究テーマの1つに、ネットワークがあります。例えば、動画サイトのサーバを世界中のどこに置くと混雑や集中が緩和されてレスポンスが良くなるのか、どのようなネットワーク形状にすると故障にも強くスムーズに情報が流れるようにできるのか、また、自然環境情報を収集するセンサネットワークをはじめ、宇宙空間や海中など劣悪な通信環境下でどのような工夫をすれば効率よく通信を行うことができるのか、これらに限らず、今後さらに広がる様々な通信の世界を高度化するための研究をしています。
現実のネットワークは非常に複雑ですが、問題を巧妙に解決できるアイデアが思い浮かび、実際にうまくいったときの爽快感や、知の地平線が広がっていく実感、現実の問題を解決できる理論がうまくできた時の爽快感はなんとも言えません。
最適化やアルゴリズム(処理手順)は、高速情報処理には必要不可欠であり、ネットワークの設計などに活かされています。良いアルゴリズムを設計するためには、問題に内在する数学的構造を巧みに利用することが重要です。現実のさまざまな問題をモデル化・定式化し、その構造を数理的に解析する研究、そして、実社会で役立つソリューションを提供するための研究・開発も行ってます。
最適化やアルゴリズムが活躍するのは、ネットワークの設計や制御の場面だけではありません。最近では、今まであまり縁のなかった音楽や人体の動きの研究などともつながってきています。例えば、巳波研は人間システム工学科の長田研との共同研究により、モーションキャプチャを用いてリアルな指の動きを再現することに成功。ここでも、うまい最適化アルゴリズムを設計したことがブレイクスルーになったのです。この技術は、人気アニメ「のだめカンタービレ フィナーレ」や「巴里編」で、ピアノ演奏をするときの指の動きに使われました。
私はピアノ演奏CG自動生成システムでアルゴリズム設計・プログラム開発を担当しました。アニメの製作時には、プロのピアニストの方に演奏していただいて、モーションキャプチャで計測したデータをもとにCGを生成。従来は、その後の欠損部分の補正やノイズの除去などに時間がかかっていたのですが、ボーンモデルを最適にフィッティングするアルゴリズムを設計し、それを搭載したシステムを開発したことで、よりリアルなアニメーションを簡単に完成させることができました。
「数学や物理を工学に応用する」学問。
世の中の様々な現象やシステムを数理モデルとしてとらえ、それらに対して数学や物理を用いて理論的にアプローチする。現実の諸問題に対して科学的な解決策を与えたり、意思決定を支援するオペレーションズ・リサーチという学問もその一分野。
アルゴリズムとは、問題を解くための手順・計算方法のこと。問題に応じた最適な処理手順を選択することで、快適な処理速度・性能を実現できる。
何かを最適化したいとき、適切なアルゴリズムを考え、それをプログラム化し、コンピュータに解かせて最適解を求めることになる。したがって、アルゴリズムの性能の良し悪しが、最適化の性能を左右する。
点が相互につながれたもの。全世界的に多数のコンピュータをつないでいるインターネットや、道路・鉄道・航空路線網、人間関係などを表す社会的ネットワークなどがある。